【そうきたか】デザイナーがIP化する時代へ:ディオール×A24 クリエティブパートナーシップ

クリスチャン・ディオール(Dior)と映画スタジオ「A24」のクリエイティブ・パートナーシップ発表のニュースとともに、ディオールの公式YouTubeチャンネルに公開された1本の動画。

画面の中で繰り広げられていたのは、サブリナ・カーペンターやジョシュ・オコナーといった旬のスター俳優たちが、男女問わず「ディオールのクリエイティブ・ディレクター、ジョナサン・アンダーソン」を演じるという奇妙なオーディション風景。

少し猫背で小走りのウォーキング、コレクションの終盤に登場し見せる照れくさそうな深いお辞儀、低めのトーンで早口に語る喋り方。それらを俳優たちが真面目な顔でトレースし、極めつけにはジョナサン本人も登場して「いや、歩き方はこうだよ」と直々に指導している。

動画の公開と同時にアンバサダーたちがA24コラボアイテムを着てSNSに投稿しているのを見ると、新たなパートナーシップという華やかなニュースにも見える。と同時に、こんな予感が。

「これはデザイナー自身がIP化、メゾンのコードになる時代の幕開けなんじゃないか?」と。

タッグを組んだA24とはどんなスタジオなのか?

A24は2012年にニューヨークで設立されたインディペンデント系の映画製作・配給スタジオ。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアカデミー賞を席巻し、『ミッドサマー』やドラマ『ユーフォリア』など、熱狂的なファン(特に)を持つ作品を次々と生み出してきました。

従来のハリウッド大手と決定的に違うのは、「徹底した作家/監督ファースト」と「カルチャーブランドとしての求心力」。尖ったクリエイターのヴィジョンをそのまま形にし、さらにオリジナルグッズの展開など、映画スタジオそのものがストリートブランドのよう。結果、若者やカルチャー層からスタジオとして箱推しされる稀有なポジションを確立しています。そのA24がディオールと組んで最初に差し出してきたのが、このジョナサンの動画でした。

デザイナーの大シャッフルが一巡したあとのに見えてきた「次の一手」

2025年から2026年にかけて、ファッション界では「The Great Reshuffle(大シャッフル)」や「Great Reset」と呼ばれる(時に壮大な椅子取りゲームと揶揄される)歴史的なデザイナー交代劇が巻き起こりました。

ディオール、シャネル、フェンディ、セリーヌ、ロエベ、グッチ、バレンシア・・名だたるメゾンでトップが次々と交代。プレタポルテ、オートクチュール、メンズ、ウィメンズと、2026年秋には一通りのコレクション発表を経て各メゾンの新体制が出揃いました。次は、一巡した新体制の中で、どう独自の価値を定義していくか、というフェーズに入っています。

その中で、今回のディオールとA24のパートナーシップでの次の一手は「デザイナー自身のIP・コード化」「親しみやすさ・わかりやすさ」でした。

出る、出るとにかく表に出るディオールでのジョナサン

ジョナサンはロエベ時代、ここまで前面に出てくるタイプではありませんでした。当時のロエベはクラフトマンシップや職人技術、アートそのものに光を当てるメゾンであり、主役はどこまでもプロダクトと作り手たち。もちろん業界的に有名なデザイナーではありますが、それでもジョナサンは「知る人ぞ知る名キュレーター」のような立ち位置でした。

ところがディオールに着任してからのジョナサンは、メディア露出が圧倒的に増加。ジョナサン自身のInstagramも活発で、コレクション発表前などは裏側の写真を大量にストーリーズに投稿。Dior の公式YouTube/Instagram はもちろん、メディアの活字ではなく、動画の対談や密着ドキュメンタリーにも頻繁に登場し、自らの言葉でインスピレーションや解説をしています。

もともとジョナサンは10代の頃に演劇学校に通っていた元・俳優志望。舞台衣装がキャラクターを形作る力に魅せられてファッションへと転向したバックグラウンドを持っています。映画監督ルカ・グァダニーノ作品の衣装を手がけるなど、エンタメの文脈を深く理解している彼だからこそ、カメラの前で「自らを演じる・語る」ことへの距離感が非常に近いのかもしれません。

デザイン画を「描かない」キュレーター型、ファレルとの違い

デザイン手法の面でも、ジョナサンは現代的です。有名服飾校を出ていながら、自らデザイン画(スタイル画)を描いてアトリエに渡すタイプではないことを公言しています。Diorのウィメンズの前クリエイティブディレクター(現Fendi)のマリア・グラツィア・キウリのようにクラシックにペンを握るデザイナーとは違い、膨大なアートブックやヴィンテージ、言葉やアイデアを集めてチームと形にしていく「キュレーター型」のアプローチです。

同じく「描かないキュレーター型」「デザイナー自身が前に出るスタイル」といえば、ルイ・ヴィトンのメンズを手がけるファレル・ウィリアムスが思い浮かびます。

ただ、ふたりのアプローチには決定的な違いがあります。

ファレルは音楽界の世界的スーパースターであり、カルチャーシーンの主役としてファッション界に迎え入れられました。ファレル自身がもたらすIP・としての引力は、本人の華やかなセレブリティ性と巨大なネットワークそのものです。

一方のジョナサンは、ロンドンで服飾を学び、自身のブランドや老舗メゾンのクリエイションでキャリアを叩き上げてきました。ジョナサン率いるディオールと、A24というカルチャーの最先端スタジオと組んで差し出してきたのは、ファレルのようなスーパースターとしての輝きではなく、「あの小走り」「あのお辞儀」「チェックシャツとジーンズ」という、本人の身体的な癖や人間味のキャラクター化でした。ディオールは、ブランドが主役である大前提を保ちながら、デザイナーという人間そのものを、ブランドを輝かせるための最も強力なピース(IP)として組み込む道を選んだのだと感じます。

同じく新時代を牽引するマチュー・ブレイジー(シャネル)は対照的。インタビューすら稀、ジョナサンよりもランウェイの一瞬ですぐに引っ込んでしまう。主役はどこまでも服とアトリエという一線を守り、自らを前に出さないスタンスです。

「手の届かない特別感」から、「分かりやすさと親しみやすさ」へ

メゾンには、歴史の中で受け継がれてきた象徴的な「コード(記号)」が存在します。ディオールでいえば、幸運の星、千鳥格子、グレー、リボン、バージャケット。通常、メゾンのコードとは服のシルエットや柄、ロゴといった「モノ」に宿るものです。

ところが今回のディオールは、そのコードの中に「デザイナー本人」を織り込もうとしているように見えます。

デザイナー自身がアイコン化した前例といえば、シャネルを30年以上率いたカール・ラガーフェルドが挙げられます。真っ白なポニーテール、サングラス、高い襟のシャツに黒いジャケット。彼の姿はシャネルというブランドの象徴そのものでした。しかし、カールが体現していたのは「手の届かない憧れや圧倒的なカリスマ、特別がゆえの排他性」でした。

では、今回のジョナサンは?

ラフに腕まくりしたチェックのシャツ、少し猫背で早口な語り口、ジーンズに履き古したスニーカー。A24が手がけた映像の中で提示されたのは、神格化されたカリスマ像ではなく、思わず笑ってしまう親しみやすさでした。その姿は決して誇張ではなく、ジョナサン自身が画面に映る姿に限りなく近い。

これまでの多くのラグジュアリーブランドが守ってきた「多くを語らない神秘性」や「別世界としてのな憧れ」ではなく、あえてデザイナー本人が語ることによる「分かりやすさ」と「親しみやすさ」。ディオールは、この親近感そのものを、これからの新しいメゾンのコードに加えようとしているのではないでしょうか。そしてこれは両立するのか・・・・

デザイナーの大交代劇の次の転換点

これほど大胆にデザイナー個人のパーソナリティをメゾンのアイデンティティに編み込む戦略は、数シーズンでディレクターを交代させるような関係性では成立しません。近年の数年、時には数シーズンでの交代というあり方とは明らかに逆を行っています。

大シャッフルが一巡した今、ディオールが選んだのは「さらなるリシャッフル」ではなく、ジョナサンという才能と深く結びつき、1人のデザイナーと長く歩んでいくという強い覚悟の表明のようにも受け取れます。デザイナー自身をIP化、メゾンのコード化すること。そしてそれを「憧れ」ではなく「親しみやすさ」や「分かりやすさ」という文脈で成立させ、新しい顧客(特に若年層)を獲得していくこと。

A24との2年間のパートナーシップはまだ始まったばかりで、これが今後ディオールのビジネスとしてどのような実を結ぶのかはまだ分かりません。けれど、後から振り返ったときに「あの動画が、メゾンとデザイナーの関係性が変わった転換点だったよね」と語られることになるのかもしれない——そんな予感を抱かせる試みでした。

「静かな自信」をポケットに。私のスタンダードな道具のこと。

最後まで読んでくださりありがとうございます。最後に、私が大切に作っているBRB INEX スキンケアバームについて、少しだけお話しさせてください。

私は、超がつくほどの内向的。喋るより書く方が落ち着いて自分の気持ちを伝えられるタイプです。なのに「発言しないならいる意味なし!」「ガンガン前に出てチャンスを掴め!」という外資系のタフな環境に、気づけば10年以上……。仕事では無理やり「外向的スイッチ」をオンにしてサバイブしています。本当の私は、静かな時間を愛する内向的な人間です。MBTI は生粋のI(内向的)

そんな私がこれを作ったきっかけは、自分自身の「自信切れ」の経験からでした。

大事な会議を前に「よし、ギアを入れよう!」と気合を入れた瞬間に、ふと鏡を見て、肌のツヤのなさや乾燥小ジワが目に入ると、せっかく溜めた自信がシュルシュルと音を立てて抜けていっちゃう。そんなことがよくありました。

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